「では、これで定例会議を終わります」

終了の声を聞いて思わず大きなため息が出る。



・・・お、終わったぁ〜。



それを見ていた一条さんがくすくす笑いながら配布された資料をまとめて私に渡した。

「プレゼンお疲れ様」

「もぅ二度とやりたくありません」

「はははっ、慣れないうちは疲れるかもしれないけど、初めてにしては上出来だったよ」

一条さんはそう言ってくれるけど、誤字があったり配布資料を誤って袋綴じしちゃったり部数が足りなかったり散々だったんだけど・・・それでも一条さんに褒められると・・・嬉しい。

「・・・お世辞でも嬉しいです」

「お世辞じゃないよ。俺の初めてのプレゼンなんて、もう言えたものじゃないからね」

え!?一条さんでもそんな事あったんですか?」

「おいおい、一応俺だって新人の頃があったんだから当たり前だろ」

そう言われればそうだけど、何だか一条さんが失敗する場面ってあまり想像できない。

「さて、じゃぁ早速今日のプレゼンの反省会をして、次回に備えようか」

「・・・えーっ!?」

「どうしたの?」

「ひょ、ひょっとして次も私が・・・?」

「勿論。君は優秀な部下だからね」



一条さん・・・そんなにっこり笑顔で言われても、私自信ないです。



「それに次のプロジェクトが発足したのは君の意見のおかげだからね。プレゼンをする資格は十分あると思うよ」

「あれは意見したと言うより、ちょっと思いついた事を言ってみただけなんですけど・・・」

「それがいいんだよ。物事を始めるきっかけはちょっとした日常からの出来事だからね」

隣の席から正面へ移動して、一条さんは私が作った資料を開く。

「それにやっぱり女の人が資料を作ると内容が見やすいよね。ほら、ここ。俺なんかはただグラフを載せるだけだけど、君は種類別に色分けしてる」

「ただ自分が見た時にどれが何だか分からなくなるから色つけただけですよ?」

「そういう気配りが俺たち男には出来ないんだよ」

「・・・あの、一条さん」

「ん?」

「一条さんって良く、褒め上手だって言われませんか?」

ポツリと呟くと、なぜか一条さんは腕を組んで考え始めてしまった。



私、そんなに悩むような事口にした?



「別に相手を喜ばせようと思って言ってるワケじゃないからね。俺は思った事を口にしているだけだよ。ただ・・・」

「ただ?」

眉間に皺を寄せて口元に手を当てて、何やら言いにくそうなので身を乗り出して一条さんの方へ耳を傾ける。

「ただ、何ですか?」

「ただ・・・に対しては甘い所があるのは、自覚しているよ」

突然名前を囁かれて、思わず周囲を見渡す。
さっきまで人がいっぱいいた会議室は、いつの間にか私と一条さんの二人だけになっていて、動揺する私の姿を一条さんは普段と同じ笑みを浮かべ見つめている。

「大丈夫。ここは俺たち以外いないから」

「そうじゃなくて・・・」

「あぁ、俺がちゃんと人が来ないか見てるから、気にしなくていいよ」

「・・・一条さん」



忘れてた。
この人、結構思い込んだら突っ走る人だったんだ。



「まぁ今日は別に何かする訳じゃないから、そんなに警戒しないで」

「する気だったんですか!?」

「残念ながら今日はこの後、外勤なんだ」



――― 外勤がなければどうするつもりだったんだろう。



背中を嫌な汗が流れ、立ち尽くす私の手を一条さんがそっと握った。

「やっぱり反省会は明日にしよう。今日は君が無事仕事をやり終えた打ち上げをしないか・・・いつもの店で」

「一条さん」

「ここ最近、お互いずっと仕事ばかりだったからね。たまにはゆっくりしよう」

「・・・はい!」

同じ職場、同じグループで仕事をしていて一緒にいる時間が長いけど、それは恋人として過ごす時間じゃない。
一緒にいられないよりはいいけど、やっぱり・・・社外でデートもしたい。

「ようやく緊張が解れたみたいだね」

「そんなに緊張してました?」

「あぁ。榊部長に袋綴じを指摘された時の潤んだ瞳が忘れられないよ」

「わ、忘れてください!そんな事っ!!」

「はははっごめん、ごめん」

掴んでいた手とは反対の手を振り上げて怒ったフリをしても、一条さんの態度は変わらない。

「さて、それじゃぁオレは仕事を終えたらそのまま店に行くから、は残業せず店に来る事・・・いいね?」

「はい」

「それと、K社から連絡が来たら、机の上にある書類を2枚FAXで流しておいてくれるかな」

「わかりました・・・一条さん?」

「何?」

「・・・いつまで手、繋いでるんですか?」

二人とも立ち上がって、片方の手には机に置いた書類を抱えているのに・・・繋いだ手はさっきのまま。

「そうだなぁ〜・・・」

「?」

「もう少し」

「・・・しょうがないですね」

「子供みたいって笑うかい?」

「いいえ。私ももう少し、一条さんと手・・・繋いでいたいです」





内緒のはずのオフィスラブ
僅かな時間ときでも、触れ合える時間を大切にしたい





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お初の一条さんです。
実はこの一条さん話は・・・部長話の前置きで書いていたんですが、何故かそのまま一条さんがヒロインを持っていってしまったので、別に書き直しました(苦笑)
くっ、夢小説の中でもこの人はやる事がイマイチ想像つかないっ!(笑)
多分、恐らく、結城さんと緒方さん話ばかりある中で、首が天井に届くくらいまで待っていてくれたであろう、RさんとIさんお待たせしましたm(_ _)m
こんな感じですが・・・い、如何でしょうか?(汗)
ちなみにこの話で出てくるK社は表サイトでは知っている人は知っている会社ですよぉ?(笑)
○ろハヤ○サ姉妹蒲lとも、一条さんは何か繋がりがあるんでしょうかねぇ〜(爆笑)←ただ社名が思いつかなかっただけ、とも言う。
※K社を知らない方へ※
常連さん2名によって設立された敏腕何でも屋さん・・・だと思ってて下さい。

という訳で、アフター5シリーズ第一弾は上司こと一条秀之さんでした!
一応これ、第四弾までやりたい・・・なぁ〜と思ってます(苦笑)
ちなみに第二弾は部長です。
いつになるか分かりませんが、取り敢えずお楽しみに〜♪←むっちゃ無責任